これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
医療現場では、コンサルテーションが、しばしば行われる。 これは、他の診療科や医療機関に対し、助言あるいは介入を求めるものである。 たとえば、皮膚科通院中の患者について、耳の疾患があるように思われるから診てほしい、と耳鼻咽喉科に依頼する、という具合である。 あるいは、リンパ腫疑いでリンパ節生検を行ったが、どうにも判断しかねるから意見を聴かせて欲しい、と他院の病理医に相談する、というものもある。
問題は、コンサルテーションを行った後の対応である。 医師の中には「専門の先生がそのように言っているのだから、そうなのだろう」と判断する者がいるが、言語道断である。 その後の診療を、相談先の医師に引き継いだのであればともかく、自分が担当医として診療を続けるならば、判断の責任は、あくまで自分にある。
学生時代に、実習で、ある市中病院の病理部を訪れた。 そこの病理医は、難しい症例について定期的に、愛知県がんセンターの病理医に相談しており、私も、それに同行した。 がんセンターに向かう車中で、次のように言われた。 「私よりも詳しい、専門の病理医に相談するのであるが、判断の最終責任は私にある。 だから、言われたことを常に無条件に受け入れるわけではない。 アドバイスされた内容に納得できなければ、それとは異なる内容を報告書に書くこともある。 それは、先方も承知しているはずである。」
当然のことである。自分が相談される側の立場だと想像してみればよい。 他の医者から相談されて意見を述べることはヤブサカではないにせよ、もし「じゃぁ、その診断に責任を持ってくれますか」と問われれば、「はい」と言うわけがない。 意見は述べるが、責任など、持てるわけがない。それは、あなたの仕事でしょ、と答えるのが当然である。 さらに言えば「自分で責任を持てないぐらいなら、医者なんか、やめてしまえ」と思うであろう。
それをふまえれば、「エラい先生が、そう言っていたのだから」などという理由でコンサルテーション先の医師の意見に追従するのは、医師として無責任である。 エラい先生の言っていることが正しそうかどうか判断できるだけの学識を、相談する側も、持っていなければならない。
これは指導医と研修医、あるいは指導医と学生の関係についても、同じことである。 「指導医の先生が、そう言っていたから」というのは、理由にならない。 そのあたりのことをよく認識していない学生や研修医が、北陸医大 (仮) には稀ではないようであり、遺憾である。