これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2018/04/17 信じること

詳しいことは書けないので、曖昧な話に終始することをお許しいただきたい。

カルテをキチンと書かない医師や看護師は、少なくない。書かない、のではなく、書けない、のかもしれぬ。 自分が行った医療行為の正当性を主張する根拠としてカルテは重要であって、「なぜ、それを行ったのか」が他人にわかるように記載を行うのが本来の姿である。 逆に、キチンとした記載がなければ、不正なことをしたのではないか、不適切な医療行為なのではないか、と疑われても仕方ない。 少なくとも私は、学生時代も研修医時代も、そう教わった。

ところが、少なからぬ医師は、そう考えていないようである。 カルテの記載が曖昧で乏しく、不適切な診療を行ったのではないかとの疑念が拭えない状況であっても、 大抵の医師は「これだけでは情報が不足していて、わからない。明かに不正であったという証拠はない。適切な診療だったかもしれない。」と言って、 可能な限り「仲間」を擁護しようとするのである。

冷静に考えれば、この態度は、おかしい。 「適切だった可能性もあるから、責めるべきではない」という論理は、少なくとも医療においては、誤りである。 患者第一を謳うならば、「不適切だった可能性を否定できないから、責められるべきである」という態度をとらねばならぬ。 だから、その「不適切だった可能性」を否定するために、カルテはキチンと記載せねばならないのである。

むろん、キチンとしたカルテ記載を行っている医者もいる。 特にトラブルの多い産科領域などは、常に、訴訟になっても問題のないように精緻な記録を残しているらしい。 が、そういう例は、現状では少数派であろう。

あなたが患者として医療機関を受診し、手術などを受けた場合、特に疑問や不審点がなくても、カルテの開示請求をすると良い。 カルテをみれば、それがマトモな医療機関なのか、そうでないのかは、一目瞭然である。 もし、キチンとした記載がなさそうであれば、医事訴訟を得意とする弁護士にでも相談して、病院相手に戦ってほしい。 そうすることが、適切なカルテ記載の必要性を医師に認識させ、まっとうな医療を実現するために、必要なのである。 あなた自身の利益のためでなく、未来の患者のため、これからの医療のために、不適切なカルテ記載を撲滅すべく、戦っていただきたい。 昨今では、適切なカルテ記載がない場合の医事訴訟は、患者側が圧倒的に有利である。臆する必要はない。

カルテがキチンと書かれていない、ということ自体が、医療行為として不適切なのである。


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