これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2018/04/02 北陸医大の未来

初期臨床研修が終わり、病理専攻医としてのキャリアが始まった。 北陸に来てから二年間、苦しい研修であった。 むろん、私自身が学んだところは多かったが、はたして、私はこの二年間に、どれだけのものを北陸医大 (仮) に生み落とすことができたか。

率直にいえば、北陸医大を本当の第一志望として志願して我が大学の医学科に入学する学生は、少ない。 国立大学医学科の中では比較的入学しやすいがゆえに選んだ、という者が多いものと思われる。 初期臨床研修あるいは専攻医として就職する者も、地元だから、とか、北陸医大卒だから、というような消極的な理由の者が大半であろう。 私のように、数ある大学の中から敢えて北陸医大を選び、縁もゆかりもないのにやってくる者は、少ない。 が、少ないものの、私以外にも存在する、という点において、この大学の未来を照らす灯は、未だ消えていないといえよう。

過去二年間にも何度か書いてきたが、我が北陸医大の良くない点は、新しいものを自分達が開拓する、時代の最前線を進む、という気概の乏しいことである。 誰かが作った最新技術を取り入れる、とか、北陸地方では一番、というような矮小な志に満足する者が、遺憾ながら、少なくないように思われる。

ところが、よくみると、その北陸医大にあって、なお世界に目を向ける者もいる。 詳しくは知らないのだが、噂では、一部の学生グループが、週刊 The New England Journal of Medicine に連載されている Case Records of Massachusetts General Hospital を読む勉強会を定期開催しているらしい。 具体的な内容は知らぬが、私が学生と共に行っているのと類似の催しであろう。 そういう、試験の役に立たない、臨床にも直結しない勉強を、自分達でやろうと考え行動する姿は、たいへん、よろしい。 精神の有様において、日本有数の水準にあるといえよう。 そして、優れた精神には豊富な学識がおのずから付随するものであるから、彼らが将来、秀でた医師や医学者になることに疑いの余地はない。

そうした学生諸君には、ぜひ、北陸医大に残らず、見ず知らずの地で初期臨床研修を受けてほしい。 いずれ、専門医資格を取得した後などに北陸に戻るのも良いが、別に、戻らなくても良い。

地元に医者を確保しよう、などと近視眼的で姑息的な発想をする大学には未来がない。 我が北陸医大は、21 世紀後半から 22 世紀にかけての日本あるいは世界の医学を牽引する立場にあるのだから、 広く日本中に人材を送り込むべきであって、「我が大学に残ってほしい」などと考えるべきではない。


戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional