これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
朝日新聞の記事によると、自由民主党の石破茂が、 消費税の軽減税率導入に対し慎重な立場を示したらしい。 要するに、医療・年金・介護・育児に対する支援を充実させるために財源が必要であって、やみくもに減税すべきではない、という趣旨である。
なぜ、医療・年金・介護に対する公的補助を充実ないし現状維持する前提なのか。
まず医療費についていえば、現状では、到底、理解できない形での公的補助が行われている。 高価な、いわゆる分子標的薬の癌に対する「有効性」が数多く報告され、臨床的にも高頻度に使われている。 こうした分子標的薬の適応を検索する目的で、腫瘍細胞の遺伝子発現検査を幅広く行うための医療体制も構築されつつある。 現行制度では、費用のうち患者が負担するのは 3 割程度であり、しかも、自己負担額が一定以上になれば「高額療養費制度」により、上限額を超えた分が公費から支給される。 要するに、高い検査や薬を使っても、その費用の大半は公金、つまり「他人の金」から支払われるので、医者も患者も、遠慮なしに高価な診療を行う。 むろん、貧困層の場合には高額療養費制度を使っても自己負担が重いために、事情が異なるのだが、それは別の話なので、ここでは触れない。
それで、高価な検査や薬を使えば癌が治るのかといえば、もちろん、治らない。 医者や薬屋の言う「効く」というのは、「生存期間が少し伸びる」というぐらいの意味に過ぎない。 さらにいえば、その「生存期間が伸びる」のも統計的な話に過ぎず、個々人のことでいえば、むしろ、薬の副作用で命を縮める例もあることを忘れてはならぬ。 そういう延命効果を得るために個人で大金を払うのは、自由である。 しかし、それを「全ての人が享受できる当然の権利」とみなし、公的に補助し、費用を全国民で負担しようとするのは、はたして、適切なことだろうか。 今の日本国に、それほどの経済的余裕があるのか。消費税を増やしてまで、やるべきことなのか。 根治をほとんど期待できない分子標的治療薬等については、公的補助の対象外とすべきである。
年金については、言うまでもない。 老人を養うために、若く貧しい人々から金をむしり取ることが、健全であるとは思われない。 公的年金としての老齢年金制度は、廃止すべきである。
介護も、同様である。 満足に動けない人々を、若者が介護して支える姿が、はたして健全であるか。 寝たきりで、自分で食事を口元に運ぶこともできないような状態で、何年もじっとテレビだけみて過ごす人生を、誰が望むのか。 それが人権なのか。それが人の尊厳なのか。
あくまで本人の意思を尊重することが前提であるが、積極的尊厳死を合法化すべきである。