これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
北陸医大 (仮) 5 年生の某君から、神田隆『医学生・研修医のための神経内科学』(中外医学社) の改訂 3 版が出ていますよ、と教えられたので、購入した。 これは、神経内科学の全領域を単著で網羅的に解説した名著である。 タイトルに「医学生・研修医のための」とあることは、いささか品位を損ねているように思われるが、記載内容は低俗ではない。 ただし、今年 4 月に刊行された最新の改訂 3 版でも 649 ページしかなく、1 ページあたりの情報量も少ない。 そのため読みやすいのだが、本当にわからないことを調べる目的で使うには不足である。 本気の調べ物には、Love S et al., Greenfield's Neuropathology, 9th ed. (CRC; 2015). などを開くのが良いだろう。
もしかすると「そんな神経内科の教科書は、病理医には不要だろう」などと言う人もいるかもしれない。 しかし、それは誤りである。むしろ病理医だからこそ、そういう臨床の教科書を書棚に配しておくべきである。 我々は臨床の一翼を担っているとはいえ、患者に直接会う機会は乏しく、つい、臨床医学的なことを忘れがちである。 病理学のことなら、普段の業務を遂行する中で否応なしに勉強するが、臨床のことは、意図的にやらなければ勉強しない。 神経内科の高度に専門的な教科書を読むのは難しいかもしれぬが、せめて、上述のような平易な書物ぐらいは、書棚に置いておきたい。